なってるハウス通信 第15号  2006年7月1日発行

編集:なってるハウス・スタッフ(広沢、有永、小林)   special thanks:芝田文乃 

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今月のピックアップ・アーティスト


AASあぁす featuring 立花 秀輝たちばな ひでき (sax)
「真のオリジナリティと現代性」


立花秀輝さんのサイト:立花秀輝のホームページ
 立花秀輝さん率いる「AAS」(「あぁす」と読む)というバンドは、その内容を紹介 するのが非常に難しいバンドです。というのも、ある時には「いぇい!ご機嫌だぜ!」と ノリノリで行きたいお客さんを前に、終始アブストラクトなフリー・インプロヴィゼーシ ョンを展開してドン引きさせたり、またある時には目を血走らせてドロドロのアングラ・ フリー・ジャズを追い求めるお客さんを前に、ある種の爽快な美しさを演出する立花さん の楽曲を矢継ぎばやに演奏してケムに巻いたりと言った具合で、その無節操とも言える多 様性が、オーディエンスにしてみれば掴みどころのないバンドだからです。

 では肝心の演奏の方はどうかと言うと、これがどの局面においても最高のクオリティを 表出し、とにかく気持ちイイ!リーダーの立花さんにしても、ピアノの山口コーイチさん にしても、ベースの海道雄高さんにしても、またドラムスの磯部潤さんにしても、あの混 沌とした80〜90年代のジャズ・シーンの中で、まさに「気持ちのいい音」を本能的に 摂取してきたとしか思えません。方法論や美意識からすれば、正統なジャズのエッセンス を感じるのですが、実際に表出されている音楽は、借り物ではない全く新しいスタイルで あり、真のオリジナリティを強く感じさせます。

 世界の裏側で創られている音楽がインターネットなどで造作無く手に入るような、超多 量でかつ高スピードな情報を処理していかなければならない現代において、AASの持つ こうした多様性こそが、極めて現代的なあり方ではないかと考えられなくもありません。 また、添え物的に自分の気分に沿った音楽をセレクトしていくのではなく、その場で起こ っていることをすべて受容するのがこれからのオーディエンスであり、AASはそういっ たこれからのオーディエンスを選別する試金石のようなバンドではないかとも。

 そう考えれば、リーダーの立花さんが、渋谷毅さんや羽野昌二さんといった、メイン・ ストリーム、アヴァンギャルドを問わないベテランから重用されるのも十分にうなずける 話でもあります。

 (立花秀輝 撮影:芝田文乃

立花秀輝こそが、そしてAASこそが真のオリジナリティと現代性を体 現しているバンドなのです。その実力に比して注目度のまだまだ低いAASでありますが、 あなたの耳でその現代性を確かめてみてはどうでしょうか?

(スタッフ:有永)
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合羽橋なってるハウス日記    「すき焼き」への遠い道 浅草死闘篇


 「ところでソマさん、あれどないなっとるのかのう、「すき焼き」の続き?」
とうとう恐れている日が来てしまった。その日「やってるハウス」店長、広能ソマ哲は開 店前の静かなひとときをカウンターに座り過ごしていた。そこに今日の出演者であるピア ノの渋山毅がやって来て先の質問をしたのであった。

 「やってるハウス」では毎月のスケジュールと軽い読み物がのっている「やってるハウ ス通信」という宣伝物を発行している。4月号に広能は毎月書いている「日記」に「すき 焼き」の事を書こうとしたのだが途中で断念したのであった。しかも最後に(つづく)と 書いてしまったため、何人かから問い合わせが来ていたが、その日まで誤魔化していたの である。しかし、とうとうJAZZ界の大物である渋山からも催促されてしまったのであ った。

(もう無視できん。)
広能の心の中に焦りと後悔が押し寄せてきた。
(来月にはあの続きを書かなければ。)
しかし、そのためには大きな問題があった。すき焼きの値段は高いのである。
シャブやチャカに手をださずライブのシノギだけで毎月を過ごしている広能にとっては、 それは馬鹿にならない出費である。しかし次回書かなければ渋山の顔をつぶすことになる。
(どないしたらええんじゃ)
広能の眠れない日々が始まった。

 そんなある日、昼の浅草の街を歩いている広能の目に大きな犬を連れた中年の女性の姿が 目に入った。
(これじゃ)
広能の目に暗く獰猛な光が宿った。広能は傍らに転がっていた角材をつかむと、静かに女性 の方へ近寄っていった、いや正確に言えば女性の手を引っ張っている丸々と太った大きな犬 のほうに…。(「すき焼きへの遠い道 代理戦争」へ続く)

(店長:広沢)

*この話はフィクションであり、「なってるハウス」出演者および従業員には関係ありません。
今回の参考資料
「仁義なき戦い 広島死闘篇」1973年東映 監督:深作欣二
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カウンターの向こうから (スタッフ雑感)    「ニューフェース現る」


 全盛期の日本映画界は映画会社がそれぞれ自分の会社に俳優までを社員として専属契約 させていました。自分の会社で新人を見つけなくてはならなくて、日活ニューフェースや 東映ニューフェース、東宝ニューフェースなどと銘打って新人を公募し、若手の俳優を探 していました。宍戸錠や赤木圭一郎、小林旭、吉永小百合なんかは日活のニューフェース、 高倉健、里見浩太朗などは東映ニューフェースだったりしてそれぞれ映画界に足を踏み入 れたわけです。つまり何の話かと申しますと、ニューフェースです。  我が社も、否、我が店も数々の難関を乗り越えて2名ほどニューフェースがやってきま した。まだ初々しくなれないせいか緊張してます。最初は私もそうだったなぁ、声でない し、メニューに無い注文受けちゃったり。なんてちょいとベテラン風吹かしてますが、今 もたいして変わんないのです。ふてぶてしくなって、ごまかし方が上手くなっただけです。 店長から学びました。

 そんなわけですから、どうぞ初々しい今のうちにニューフェースの表情を覗きにいらし てください。週末辺りが在店の可能性が高いですが、髭面のむさいオッサンだけだったら ゴメンなさい。

(スタッフ:小林)
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